国宝「西置繭所」保存整備事業「2021年 照明デザイン賞」優秀賞 受賞について

2021.05.24


令和2年5月に足かけ6年にわたる保存修理及び整備活用工事が完了し、同年10月に公開活用を開始した富岡製糸場の国宝「西置繭所」について、このたび、当該保存整備事業に伴う照明デザインが、(一社)照明学会が主催する「2021年 照明デザイン賞」の優秀賞を受賞しましたのでお知らせします。

この照明デザイン賞は、「光を素材とした、優れたデザイン的内容を持ち、創意工夫に満ちた作品を顕彰するものであり、近年、国内に竣工した空間に対する光環境や照明デザインにおいて、社会的、文化的見地からも極めて高い水準が認められる独創的なもの、或いは新たな照明デザインの可能性を示唆するもので、時代を画すると目される優れた作品を表彰するもの」で、2021年の受賞は、応募作品総数55件のうち、最優秀賞1件、優秀賞3件、入賞3件、審査員特別賞1件です(照明学会HPより)。

西置繭所の照明デザインは、建築の魅力を引き出しつつ、照明を意識せずに見学や鑑賞ができる空間づくりをコンセプトとしています。



<受賞者>
齋賀英二郎((公財)文化財建造物保存技術協会)
飯塚千恵里(飯塚千恵里照明設計事務所)



<照明設計者による作品コンセプト>
「明治5年に創建された木骨煉瓦造の建築物を、その価値を維持・保存しながら活用するという富岡市のビジョンに基づきエリアごとの照明計画を行った。1階では耐震補強鉄骨とガラスボックスが設置され、来館者はその内部から建物を見学する。鉄骨に設置した照明で内壁と漆喰天井を照らすことによりガラスの存在を消し、建物を肌で感じられるよう計画している。また全体を通して中央にある柱を照らし、104mという南北に長い建物を一体として感じられるよう意図している。これらの器具は来館者に見えない位置にあるか、または極限までグレア(注1)を抑えてガラスへの映り込みをほぼなくしている。2階は操業当時のダイナミックな空間をそのまま感じられるよう、同じくグレアを抑えたスポットライト、フラッドライト(注2)と什器照明により必要な場所のみを照らしている。建築の魅力を引き出し、照明を意識せずに見学、鑑賞ができる空間の創出をコンセプトとした。」
(注1)まぶしさ
(注2)投光器